第2章 口減らし
異様な場所に
私は何かを察した
「すまない、忘れ物をしたみたいだ。ここで待っていてくれるかい?すぐ戻ってくる」
『…うん、わかった、まってる』
「本当にすまない…!」
父はそういって
私を強く抱きしめ去って行った
抱きしめる父の腕が少し震えていた
半刻が過ぎ、一刻が過ぎ
けれど父が戻ってくることは無かった
恐らく私は
口減らしに捨てられたのだろう
6人も5人も大して変わらない気がするが
それでも口数が少ないほうが
家のような貧しい家庭にとってはいいのだろう
こうして
第二の人生は
齢6にして親に捨てられるという
経験をする事となった
…小さな体でこの山中
生き残れる保証など皆無
せめて雨は凌げるようにと
洞穴の前に置き去りにしたんだろう
さてどうしたものか