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嫉妬は最大の愛情表現

第2章 2


「もう休んだ方がいいよ。ずっと待っててくれてありがとうね。今日は本当に遅くなってごめんなさい」

一気にいって踵を返すお嬢様のうしろから、長い腕が伸びてきた。

バタン!と、開きっぱなしだったドアを川島の手が勢いよく閉める。

お嬢様がなにかいいかけようとして口を開きかけると、背後からクックッと低音の笑い声が聞こえた。

振り返ると、お嬢様の身体は川島の両腕に取り囲まれていた。形のいい唇がうすく笑っている。

「……逃がしませんよ」

フフッと息だけの声で笑う。
まなざしだけが冷静だった。

笑いの発作をこらえるかのような、その表情にお嬢様は怖くなり動けなくなった。

川島がうす笑いを浮かべたまま、ゆっくりと首すじに顔を埋めてくる。

ついばむようなキスを何度もされながら、その唇が徐々にあがってくる。

吐息が耳を掠めるのを感じた瞬間、ドアに押さえつけるように身体の距離をつめられた。

「川島――、んッ」

川島は両肘から先をドアにつけたまま、お嬢様にキスをした。もう笑いは消えていた。

その代わりに熱い息を吐きながらお嬢様の唇をやさしく食べている。

「ん……っ……んぅ」

やさしい川島の唇の動きに、お嬢様は緊張がほぐれていくのを感じた。同時に快感も生まれていく。

よかった。いつもの川島に戻った。
きっと少し拗ねてみせただけだったのだ。

そう思っていたら唇の動きが忙(せわ)しなくなった。川島の熱く濡れた舌が腔内へ入ってきて暴れはじめる。

それはどんどん激しさを増していった。

さっきまでワインに漬かっていた舌が動き回り、甘く華やかな香りをまき散らしていく。
香りが鼻から抜けていく。

「っは……ん……ンんッ」

息を奪われ苦しい。

腔内を侵され空気を求めて喘ぐお嬢様にかまわず、川島はすくうようにその身体を抱きしめた。

後頭部を支えながらなおも激しいキスを続ける川島に、さっき感じた恐怖がよみがえる。

やはりまだ怒っているのだろうか、連絡しなかったことを――?

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