第2章 2
「その目はなんですか?ちゃんと触ってるでしょ、ほら」
「は……っぁ……あぁ!」
触ってほしいところを指と舌で何度もゆるく往復されて、なにもかもが限界だった。
腰を擦り付けても気づかないふりをする川島を、お嬢様は懇願するような目で見つめた。
川島の喉仏が上下する。
「――なんて顔するんですか」
嘆息(たんそく)しながら両手でお嬢様の顔を包む。
「いってください、お嬢様。オレが、欲しいって」
お嬢様は目を一度そらし、また川島を見た。
「お嬢様……」
頼むからいってくれ、といわんばかりに切なげな目で見つめられる。
たまらずに川島の髪を乱しながらキスした。
唇を離し、一度唾を飲みこむ。
川島の黒い瞳を見つめた。
「川島が欲しい。川島ので……わたしの中……滅茶苦茶に、愛して……欲しい」
自分の口から、こんな言葉が出てくるなんて信じられなかった。
まつ毛が顫えた瞬間、川島が視界から消えた。
なにが起きたのかわからなかった。
顔を向けると川島は隣で、シーツに顔を埋め突っ伏していた。
「……川島?」
「ああ……もう死んでもいい」
小声すぎてお嬢様には聞こえない。
「川島」
「そんなこといわれたら……殺す気ですか、オレを」
自分でいわせたくせに、川島は顔を赤くして歓喜していた。そんな様子を見たら、こっちまで恥ずかしくなってしまう。
お嬢様は、ただ自分の言葉ひとつがこんなにも川島に影響を与えることに、恐怖と悦びを同時に覚えた。
それは、さっきまで川島に感じていたものと同じ種類の感情だった。
ひどく倒錯的で、甘い――。