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氷華血鎖【鳴門】

第19章 一部・一触即発


ふむ。まぁ確かにマツのぼんやりとした記憶では整った容姿をしてる。スラリとしていて穏やかな感じな人で女性ウケが良さそうな男性。正直こんなイケてる人なら忘れはしないだろうけど生憎記憶に無………蒼い髪、橙の瞳。



『………』

「姉様?」

『そうね、もしかしたら患者様かも』



鍋をよそい終えてから立ち上がるとマツとトシがエプロンの裾を掴んで不安そうに覗き込んで来る。



「…行くの?」

『ええ。ちょっとね』

「「!」」

『患者様だったら放っておけないでしょ?大丈夫、皆がご飯食べ終わる頃には戻って来るから』

「「………」」



俯く弟妹の頭を撫でてイタチさんと鬼鮫さんに会釈をして居間を出る。





※※※





数回ノックをすれば"どうぞ"と言う声が聞こえて部屋に邪魔する。必要最低限の物しか置いてない簡素な部屋。鼻腔を刺激するのは甘い香り。



「患者を探しに行く、と言う格好では無いな」



術式の書いてある巻物を広げて、その前に胡座をかきながらチャクラを練るチヅルはフードを深く被った漆黒の外套を羽織っていて右側に刀。左側に般若のお面。



「マツの記憶を見たのだろう?知人か?」

『まぁ…そんなとこ』



チャクラを練り終えたチヅルは巻物に手を当てる。その瞬間に空気が震えた。



「………」

『結界の術式を変えた。条件を足したとこ』



まぁ応急処置だけど、と言うと刀を腰に携えながら立ち上がって般若の面を拾い上げ、部屋を出ようとするところをついて行く。



『………貴方には弟妹を見ててもらいたいんだけど』

「どう術式を変えたのかは知らないが安全性を強くしたなら鬼鮫一人でも事足りる」

『心配性なんだから』



小さく笑うと般若の面を被る。同行の許可はしてくれた様だ。





※※※





宿に戻ると弟が数名の女を連れ込んで酒を飲んでいた。ったく…まだ陽は落ち切ってない時間から何をしてるんだか。



「兄者お帰り~!あ、兄者も飲む?土産に草餅もあるからつまみに」

「………シズル」

「…!」



顎で付いて来る様に促して隣部屋に移動する。



「暁と遭遇した。あの人の言ってた事は間違い無い」



村に行った事、年の離れた腹違いの双子の弟妹の事は伏せる。



「では何故、村が見付からねぇ!?」
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