第19章 一部・一触即発
干柿鬼鮫が言っていたのは"結界をすり抜けたと言う事は邪な心はお持ちでは無いのでしょうが"。つまり俺が結界をすり抜けたのはチヅル様をどうこうしよう、とは思ってないからである。弟は…シズルは多分違うからすり抜けなれなかった。
「特殊な結界だろう」
「ちっ…条件が分からない以上、結界を壊す事も出来ねぇな」
「国を出るぞ」
「はぁ?何でだよ」
直接チヅル様をお見かけした訳では無いがあの双子が生きている事実を知った。暁にも遭遇した。つまりあの村にはチヅル様が居ると確信付けている。
そして何よりチヅル様は俺達が生きている事を知っていると見てもいい。何故なら…亡き故郷の残骸に建てた墓が破壊されていたからだ。血遁で作った墓…壊せるのは同じ血遁使いであるチヅル様しか居ない。だとしたらあの事件を精算する為に必ず俺達を探して…殺すだろう。
「あの場は上手く離脱出来たが…次見付かれば離脱は容易では無い」
「暁一人くらい…」
「暁は常にツーマンセルで行動している。俺が出会った暁は干柿鬼鮫だ」
「………だから?」
頓珍漢な事を言う弟に頭を抱える。本当に興味の無い事は何も覚えない、覚えようとしない。
「干柿鬼鮫のペアはあのうちはイタチだぞ」
「あー!写輪眼の!どんな奴かは知らねぇけど。でもそれなら丁度良いんじゃね?アイツ、確かそのうちはイタチって奴の身体とかなんとか欲してたからいい土産になんじゃん」
あの人が勝てなかった相手に俺達が容易に勝てる訳無いだろ、と言う突っ込みすらも面倒になってくる。
「最悪、あの方も一緒だと考えて…遭遇したら三対二。逃げるどころか、それこそ本当の終わりだ」
「………」
「俺達は探りに来ただけだ。今は戦いは避けたい」
「わーったよ、兄者が言うなら」
女と遊びたかったのに…と渋々、宿を出る用意をする。此方にその気が無くてもチヅル様と会えば戦闘は免れない。戦うのであればちゃんと場を整え策を講じ無ければ…負ける。長い時間をかけて生にしがみついた意味が無くなる。
→to be continued.
(次の項に追加キャラの詳細有)