• テキストサイズ

氷華血鎖【鳴門】

第18章 一部・逢引


しかし今はその建前も必要だと感じた。理由は簡単。少しでもチヅルの傍に居たいと思うこの感情がまだ何なのかハッキリしないから。



『ふふ、確かに。じゃあイタチさん着替えてきて。その格好じゃ目立つし』



纏ってるのは暁の象徴である外套と里に反逆の意が込められた額当て。



『寝室の箪笥に着流し保管してあるから』

「分かった」





※※※





仲睦まじそうに村から出て行く姉上とイタチ兄の様子をマツと鬼鮫さんの三人で木陰から見送る。そんな姉上達の様子を見てマツは小さくガッツポーズをした。正直マツが何をしようとしてるのかは僕には分からない。



「本っ当に二人共鈍いんだから!」

「成程…そう言う事でしたか。私もあのイタチさんのあんな表情や態度は初めて見ましたよ」

「え?そうなの?鬼鮫おじ様と居る時のイタチ兄様はどんな感じなの?」

「とても冷こ…じゃなくてクールな方ですよ」

「「それっていつもだよね?」」

「お子様にはまだ難しいクールです」



普段のイタチ兄はもっとクールなんだ…やっぱりイタチ兄は格好良いなぁって思ってるとマツは次の作戦とやらを思案し始めた。



「ねぇねぇ、姉上とイタチ兄を二人にしてどうすんの?」

「ばっ!?トシ馬鹿なの!?」

「えっ…」



喧嘩の時よりも物凄い剣幕でマツにドヤされて肩が竦む。マツが何がしたいのかは分からないけど双子だからアイコンタクトで何をして欲しいのかは分かるから取り敢えずはマツに合わせてはいるけども。



「無自覚なあの二人に気付かせてあげたいの!!」

「無自覚…?」

「ほら、トシも分かるでしょ?姉様がイタチ兄様をとても信頼してるのは」



まぁ…確かに。物心付く前から姉上はずっと一人で僕達を守ってくれてて他の人と一緒に居たりとか話したりしてるのを見た事が無かった。でも二年半前に暁の皆と出会ってからちょっとだけ変わった。他人に気を許さない姉上が少しだけ気を許しててイタチ兄には特に気を許してるって言うか…僕達に向ける優しさとは別の優しさが向けられてるって言うか。
ミツ兄にも気は許してるし優しいし…でもイタチ兄に向ける表情は僕達にも知らない表情だったり言葉で言うのは難しいけど甘い感じがする。



「でも姉上にはミツ兄がいるじゃん」

「違う違う!ミツ兄は違う!」
/ 222ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp