第17章 一部・暗雲
女性らしい細い曲線。ふっくらとした胸部とお尻は彫刻的な程に美しいスタイルをしている女だった。
『…誰?』
しまった、気付かれた。咄嗟に変化の術で岩に擬態する。
『おかしいな…視線を感じたと思ったんだけど…動物だったのかしら』
「!」
月明かりに照らされた白銀の髪の毛に心臓がとても大きく波打った。だけど肝心な顔が確認出来ない。俺の知ってるあの方はもっと小柄で鈴の音の様な声をしていた。だから多分、探し人は違うのだろうけど嫌な恐怖を覚える。
『戻ろ』
遠ざかる足音に心の中で息を吐く。もうすぐ夜明けだ。一度弟と合流しよう。
※※※
「何処行ってたんだよ兄者!急に姿も気配も消えるし心配しただろ!」
「すまない。何か見えた気がしたんだが見事に何も無くて気付いたら迷った」
発見した村の事とあの膨大なチャクラを持ってた女の事は伏せる。弟は俺の気配が消えたと言っていたが俺には弟の気配がちゃんと感知出来ていたからだ。これは憶測なのだが、もし仮にあの村に本当にあのお方が居て結界が張ってあるのだとしたら俺だけその結界をすり抜けた事になる。弟はすり抜けられず俺はすり抜けたとしたら一体どんな条件下ですり抜けるのか。ただ結界をすり抜けた様な気配は全く無かったから確証が全く持てない。
「兄者が迷うとか余程だな…まぁ気味悪い山だし」
「数日、宿をとって情報収集と探索をしよう」
「んー…兄者がそう言うなら。あー…遊郭行きてぇ…」
「まだ17歳だろ?」
「関係ねぇよ、んなの。女なんて欲を吐き出す為の道具だろ」
だからあのお方は大量の殺戮を行い島を沈めたんだと弟にも気付いて欲しい。あの島は…腐っていた。皆、等しく人間だ。女が男の道具と言う考えは間違っている。
※※※
「ほう…こんな人里離れた山奥にあの氷の女王がいらっしゃるのですね」
氷の女王。前にも一度聞いた事がある。確か勧誘する時の…鉄の国で敵の奇襲にあった時だったか。
「氷の女王…とは」
「ご存知無いですか?」
雪一族の血を引く氷遁使いの中で最も残酷で強力な氷遁を使用する事から、その様な通り名が就いたらしい。と言ってもあくまで水の国の中での通り名らしい。水の国では弥生一族の話は禁句だとか。