第17章 一部・暗雲
何故、彼がこの目の事を知ってるのかは分からないけど、もしかするとアタシよりは情報を持ってるとも考えられる。目の事については大蛇丸さんと接触を図った方が早いか…いや、でも砂に潜入した時、大蛇丸さんの情報も無かったから今、彼が何処に居るかは分からない。
それに気になってるのは目だけじゃ無い。生きている可能性がある腹違いの兄弟の事も。
『一個ずつ潰した方がいいか』
鏡魔眼の事か兄弟の事か。
『駄目だ。疲れた…』
秘湯に行ってちょっと疲れを取るとしよう。
※※※
「うわ、もう真っ暗じゃねぇかよ。どうする兄者?今晩はこの辺で野宿でもするか?」
-しーん…-
「あれ?兄者…?何処行ったんだ兄者…」
※※※
『んー!極楽極ら…』
-ピクッ-
『!』
誰かが結界の中に入って来たのを感じて湯船から立ち上がる。こんな夜中に誰だ。結界をすり抜けられるって事は悪意を持ってる人じゃないのは確かなんだけど…暁のメンバーじゃ無さそう。かと言って一般人でも無い。秀でた感知タイプじゃないから、詳しくは分からないけど…
『悪意がある人は結界をすり抜けられないし』
ただの通りすがりとも考えられる。悪意が無いなら危惧する必要は無い…と考え再び湯船に浸かる。
※※※
「こんな所に村が…」
家も十数軒くらいしか建ってない小さな集落。あの人が言ってたのはこの村の事だろうか。他に村がある様な気配は感じ無いから恐らくこの村の事だろう。因みに知らない間に弟とは離れた。
「だが…大したチャクラは感じられない」
あの方のチャクラはこんなに雑魚では無い。やはり違う村か…と踵を返して弟と合流しに戻ろうとした時だった。村の外れの山頂部から膨大なチャクラを感じる。
「あそこか」
気配を消して極力音を立てぬ様に木々を飛び伝いながら山頂まで急ぐと鼻腔を掠めるのは硫黄の匂い。国境付近の山脈と言えど一応、湯の国。温泉くらいはあって当然か。
-すたっ…-
「!」
岩場の影に隠れて様子を伺う。別に覗くつもりなんて無いし、そんなのは趣味でも無いし寧ろけしからんと思っている。だが見てしまったのは仕方が無い。
月の逆光で映し出されるシルエットは大層艶かしい。