第12章 零部・一別
「そう言ってくれるな」
『!』
無意識に伸びた手はチヅルの髪の毛を梳く様に耳にかける。ポカンと小さく口を開けて数回瞬きをすると見る見るうちに頬が桃色に染っていく。
『な、なんっ…は?え?』
言葉にならない言葉を発しながら一本後退る。
『いくらアタシが小さくて童顔だからってやめてよね、子供扱い!』
「子供扱い…?」
そう捉えられてしまったか。まぁ…それでも構わない。
『もー!早く行け!次、村に来る時は怪我で来ないでよね!』
今回も別に怪我で来た訳では無い。ただ言伝に来ただけ………予定に無かった長居をしてしまったが。
『い…いってらっしゃい…』
「!」
やはり、ツンとそっぽを向く。でもとても有難い言葉だった。
「………行ってくる」
ポンポンと数回、チヅルの頭を撫でるように叩いた。
※※※
『~っ!』
ズルズルと力が抜けた様に地面にしゃがみ込む。
何。何なのあれ。子供扱い酷くない?なのに変な動悸がしてるし、どうしたのアタシ。何かの病の前触れかしら。
『………病じゃないな』
自分で自分の身体を医術でサッと調べてみるけど至って健康体。成長が遅いだけの健康体。この小さな身体も子供っぽい顔付きも成長が遅いだけだと信じたいが本音だけども。
『…にしても』
イタチさんと大蛇丸さんが先程一悶着あったのは記憶が見えたから知ってる。でも動悸のせいで全部見れなかったけど。だとしてもやっぱり昨夜や昨日の昼間の変な症状やこの予感ももしかしてこの目のせい?
『先を見る目…』
婆様はそんな事言ってただろうか。もしそうだとしてあの状況が覚醒の前触れだとしたら覚醒条件は何?男を恨み憎み沢山殺して第一段階。何かの為に全てを捨てて第二段階。最終段階は何だったっけ。いくら思い出そうとしても思い出せない。
『一度…島に戻るか』
色々リスクはあるし…手掛かりは何一つ残ってないだろうけど。沈めたのはアタシ本人だし三年は経過してるから海底に沈んでるか海の藻屑となっているのは間違い無い。手掛かりは何も無いかも知れないけど…もしかしたら何か思い出せるかもしれない。
『そうするとなると…』
問題は弟妹だ。連れては行けない。