第12章 零部・一別
「いいえ、何も。ただ便利だと思わない?他人の記憶が読め他人の思考が分かる…そして先も見える」
「!?」
先が…見える、だと?そんな話はチヅルからもチヅルの記憶からも無かった…知らない情報。
「まぁ…数世代前から、その能力を使用出来ない様に覚醒の段階を分けて封印されてるんだけどね」
「封印?」
「だって未来が見えるって凄いじゃない?何でも出来るわ。覚醒の段階は私も知らないけど…封印されてから最終段階まで覚醒したのはチヅルちゃんの祖母だけらしいけどね」
記憶や思想が読める…写輪眼の幻術も万華鏡では無くては効かない…そして未来が見える………
それらを段階と踏んで行くと記憶や思想が読めるのが第一段階と考えていいだろう。確か記憶や思想が読める様に開眼したのは異性を恨み憎み沢山殺したからだと言っていたか。
「だとしても…チヅルや弟妹を狙うのは組織の掟に反する」
「そんなの…私には関係無いわ」
※※※
「………」
部下の助けもあって上手く戦闘を離脱した大蛇丸。既に気配は無い。組織の掟に反した事などをリーダーに報告する為に鴉を飛ばす。チヅルにも大蛇丸の標的である事を知らせた方が良いかと思い、降りた山を振り返る。
「否」
無駄な心配事は増やさぬ方が懸命だろう。
リーダーに報告すれば大蛇丸は裏切り者として追われる身になる。そう易々とチヅルに近付く事は出来ない。
暫く山を見詰めた後、踵を返して歩を進めようとすると目の前には丁度、考えていた人物が少し不機嫌そうな顔付きで立っていた。
『ん!』
と少し荒っぽく胸に押し付けられた風呂敷。受け取れ、と言う事だろうか。
『アタシの医療チャクラが練り込まれた特殊な軟膏。ちょっとした傷なら塗れば直ぐ塞がる万能薬…とおむすび』
受け取ると腕を組んでそっぽを向く。
「何故此処にいる」
『そーゆー予感がしたのよ!ったく…コレだから男ってのは…』
予感…先を見る力…否、考え過ぎか。
『口数が少ないと言うか何と言うか…一言くらいくれたって………いいじゃない』
「!」
つん、とそっぽを向いたまま…でも不機嫌そうな表情は消えていて代わりに自意識過剰かも知れないが寂しそうな表情をしていた。