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氷華血鎖【鳴門】

第12章 零部・一別


髪の毛を梳くチヅルの優しい手付きが酷く心地良かった。毎日この優しい手に頭を撫でられている弟妹はきっと歪み無く真っ直ぐ素直で優しい子に育つだろうと思う。
目が覚めたら既に朝日が昇っていて随分と眠っていたのだと思った。寝覚めはチヅルの優しい笑顔。こんな幸せは遥か昔に失ったものだと捨てたものだと思っていた。



「「………」」

「何だ?」



穴が空きそうなくらいに俺を凝視するのは綺麗な藤色の双眼を持つ二人の幼子。



「きょうはいたちにぃにが、すっきりしてる」

「なにかいいことあった?」



この幼子…チヅルの弟妹は正直侮れない。流石、チヅルの弟妹と言うべきか恐らく忍の才はある。術の上達も昨日の明朝の隠密行動も、この洞察力も。



-カァ-



「!」

「からすさんだ!」

「いたちにぃに、からすさんとなかよしなんだね!」



この村に滞在した時から、この近辺を張らせていた口寄せの鴉。俺の元まで来たと言う事は何かを察知したのだろう。



「………成程」



大蛇丸か。
首を傾げながらお互いに顔を見合わす双子に構わず寝室に行き、隅に置いてあった忍装束を着て暁の象徴である外套を羽織って一文字の傷を付けた額当てを巻く。



「………!イタチにぃに…!」

「いっちゃうの?」

「あぁ…すまない」



いつもチヅルが弟妹にしている様に頭を撫でる。
チヅルにも何か………否、必要無いか。惜しくなるのは困る。





※※※





サァ…と風に靡く髪の毛が頬を撫でる。



『やっぱりね』



夜中の予感は的中した。村近辺に張り巡らせた結界からイタチさんが出たのが分かった。予感がしたのも勿論だけど腰を落ち着ける様なタイプじゃ無いし何の為に暁に加入してるかも記憶を見て知ってるから何となく分かってた。



『一言くらいくれても良いのに』



これだから男って生き物は。





※※※





「チヅルちゃんは元気?」

「チヅルが狙いか?」



魔幻・枷杭の術で大蛇丸の動きを止めて少しだけ会話をする。



「一番はイタチ君、貴方の身体なんだけど…稀少な血継限界であるチヅルちゃんも欲しいわね。特にあの目」

「何か知っているのか?」

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