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氷華血鎖【鳴門】

第11章 零部・前兆と予感


そう言うと少し離れた木の影から人影が現れる。



「気配は完全に消していたハズだが…流石と言うべきか」

『分かるよ。だって一緒に居る時間がそれなりにあるから』

「そうか」



短く答えるだけでそれ以上は口を開かない。邪魔をしないように気を使ってくれているのだろうか。



『昼間』

「?」

『何かが一瞬だけ見えたの』

「何か、とは?」

『分かんない。本当に一瞬過ぎて思い出せないの』

「………」

『あー!!!駄目だ!無理!』



ザパッと音を立てて滝から抜けると、まるで羽根でも生えたかの様に身体が軽くなる。



『滝に打たれて集中すれば思い出すんじゃ無いかと思ったんだけどなぁ…』

「そのままだと風邪を引く」

『そうね、秘湯に寄ってから戻るわ。何なら一緒に行く?ちゃんと別々だし』



多分そーゆーの興味無いだろうから冗談で言ったつもりだった。



「………」



えっ。





※※※





『この秘湯ねー疲労回復と滋養強壮は最高レベルだよ』



柵一枚隔てた向う側から明るい声が響いて来る。十蔵からの言伝を伝えに来た時に思いっ切りこの秘湯に投げ飛ばされたのが十日くらい前の記憶。あの時とは随分と関係が変わった様に感じる。多分、お互いにお互いを見る目が変わった。



『今のうちに…ゆっくり休養取っときな』

「………?」



"今のうち"
その言葉に変な引っ掛かりを覚える。



『アタシは単なる医者としての協力者だけど、イタチさん貴方は違う。指示が出たら動かなきゃいけないでしょ』



成程。そう言う意味か。



『まぁ…アタシ自身はやる事無けりゃ、もっと暁に協力しても良いんだけどね…そうもいかない』

「やる事…?」

『マツもトシも…大人になるまで生きれない』

「!?」



大人になるまで生きれない…?何故そんな事が分かるんだ。そもそもチヅルは医者だから、それが初めから分かってるのならば治す算段はいくらでもあるハズでは…



『生まれつきチャクラ量が非常に少なくてさ。大技なんか習得して使用したら一回使用しただけで危険』



流石にチャクラ量を増やす事は出来ない、と続ける。



『だからあまり修行は付けたくなかったんだけどね…だけど出来る事ならあの子達が望む事は叶えてあげたい』
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