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氷華血鎖【鳴門】

第11章 零部・前兆と予感


って言うのも記憶が見えるとか思考が分かるとかそう言う類では無いからだ。思考を読む時はその人の心の声が聴こえる。記憶を見る時はちゃんと映像が見える。
だけど今のはどうだろう。まるでビリビリに破かれた写真の様にハッキリとしない絵がほんの一瞬、見えただけ。



「ねぇね…」

「ぐあいわるい?」



不安そうに顔を覗き込んで来る弟妹の頭を撫でて笑顔を作るけど不安の顔色は消えない。



『だーいじょーぶ!ねっ?』

「「…うん」」



困ったなぁ…この子達、最近アタシの大丈夫に疑いを持ち始めてる。





※※※





あれからチヅルの様子は何ともない。夕食の支度中も夕食中も弟妹をいつもの様に額に口付けを落として寝かし付ける時も何も変化は無い。
疲れただけ、と本人は言っていたがそんな感じでは無かった。病の線も疑ったが病の場合、何処かしらチャクラに異状が見られるハズだが、その様子も無い。



『………』



そして今夜もチヅルは起きたまま。明朝、眠れてたハズなのだが一時的なものだったのだろうか。いつもの様に小窓から見える月を見上げ…そして立ち上がると静かに寝室を出る。



「………」



気配が遠のいて行く。縁側に出た訳じゃなく何処かに向かったのか。寝室に影分身を残して自らも寝室を出てチヅルの後を追う。



-ザアァァァア…-



向かった場所は村から少し離れた盛大な滝が流れ落ちる場所。着流しを着たまま水面に坐禅すると何かを集中する様に滝に打たれる。あの高さから流れ落ちる滝はそれなりに威力はあるだろうが…大事無いのだろうか。





※※※





『ふぅー…』



激しい滝に打たれながら意識を集中する。昼間のあの頭痛と眩暈は何だったのだろう。あの一瞬の映像は何だったんだろう。記憶力には自身はある方だけど瞬き以上に一瞬だったから憶えてない。生憎、瞬間記憶能力みたいな特異能力は無いから思い出すのに苦労する。



-ザアァァァア…-



集中集中集中…神経を研ぎ澄まして。思い出して。あの時何が見えた?もし、アレがこの目の最終段階の覚醒だとしたら最終段階は何が出来たっけ。覚醒の条件は何だっけ。あの時、祖母は何て言ってたっけ。



『………、そこに居るんでしょ』

「!」

『別に邪魔じゃないから』
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