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氷華血鎖【鳴門】

第10章 零部・二人の時間


それに対して当人は"自分を女だと思った事は無い"と言った。だがどうだろう。今、俺の目の前のチヅルは頬を染め花も恥じらう乙女そのもの。



『いや、あの…本当に御免なさい…』

「………」



こちらに背を向けて膝を抱えながら蹲るチヅル。髪の毛の隙間から見える小さな耳もほんのり紅く染まっていた。
そんな姿を可愛いなどと思ってる自分がいる事に心底驚いた。



『どのくらい…寝てた?』

「一刻くらいだな」

『そんなに!?そんなに寝たの何年ぶりだろ…はぁ…ますます申し訳無い…』



たった一刻。たった二時間。それをそんなにと言うチヅルは余程普段から寝てないのが良く分かる。いつか身体を壊すのではと言う心配と同時に少しこそばゆさを感じた。
理由はどうあれ、それだけ安心して眠ってくれた事に。



『あ、りがと…』

「?」

『胸、貸してくれて』

「構わない」

『多分…そのお陰で良く眠れた』

「!」



ぎゅうっと心の臓が掴まれる感覚。今、チヅルがどんな顔をしてるのか知りたくなって、その小さな背中に手を伸ばそうとした時だった。



-スパァン-



『「!?」』





※※※





スパァンと勢い良く襖を開ける音はアタシ達のむず痒い雰囲気を盛大に壊した。開いた襖の方を見ると弟妹が悪戯っ子…否、意地の悪そうな笑みを浮かべていた。



「またふたりでひみつのはなし?」

「ねぇねといたちにぃに、なかよし」



いや、仲は悪くは無いけども。



『まだ夜明け前よ』

「だっておおきなおと、したもん」

「ねぇね、せなかいたいいたい」

「もうくっつかないの?」

『「!?」』



待って。それってアタシが背中ぶつけた音で起きたって訳じゃ無いよね?この子達は一体いつから起きてて見てたの。全然気付かなかった。チラリとイタチさんを見ると目を丸くしてる様子からして彼も気付かなかったんだと思う。



「ふたりはふーふー?」

『違う』

「じゃあこいびとだ!」

『だから違うってば』

「「じゃあどうしてくっついてたの?」」

『いや、あの…だから…それは…』



純粋な目でジリジリと躙り寄って来る弟妹に何て答えようか迷っていたら二人は顔を見合わせて何かを閃いたように頷くとニヤついた顔でアタシを見る。
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