第10章 零部・二人の時間
「「とうっ!!!」」
『ぐえっ!?』
二人分の頭突き。いつの間にこんなに力強くなったのだろう。予期せぬ行動もあって力も入ってなかったから少しだけ飛ばされる。
-ばふっ-
『「!」』
「「いえーい!だいせいこう!」」
と高々にハイタッチをするマツとトシ。何が大成功だと言うんだ…と思ったところで背中から伝わってくる熱に後ろを振り向く。
『「………」』
「いくぞ!まつ!あされんだ!」
「あさごはんのじかんにはもどるね!」
『こら!二人共………行っちゃった…』
「随分と活発になったものだな」
『!』
-パッ-
至近距離で聴こえる声に心臓が大きく跳ねて密着してる事を思い出して離れる。
『ごめん…うちの子達が…』
「いや…」
つい、と顔を逸らされる。少し頬が染まってる様に見えたのは登り始めた太陽のせいだろう。
※※※
お姉様は私達にとっての全て。両親も居ないし記憶も無い。でも私達にはお姉様が居るから全然寂しくない。寧ろお姉様がお母様みたいなもの。
「ふたりともなかよくしてるかな?」
「なかよしだよ、きっと」
お姉様にとっても私達が全て。それは自負してる。
でもね、時々考えるの。お姉様の幸せってなんだろうって。私達はお姉様が傍に居てくれるだけで幸せ。術のお稽古付けてもらって毎日美味しいご飯作って貰って毎日お姉様と過ごせるのがとっても幸せ。
でもお姉様は?
そりゃ勿論お姉様も私達と過ごせるのは幸せだと思ってくれてると思うんだ。だけど私達は知っている。毎夜毎夜お姉様が魘されて起きるのを…ずっと眠れていないのを。
「もっとなかよしになればいいのに」
「ね!」
二人で必死に考えた。どうやったらお姉様がちゃんと寝れるのかを。だから心配かけない様にずっといい子で居ようって決めてるけど、それでもお姉様は眠れない。
でもイタチお兄ちゃんに寄り添って寝てるのを見た時、これだって思った。他の暁の皆とイタチお兄ちゃんの接し方が違うのは始めから気付いてたけど確信に変わったの。
お姉様には支えてくれる人が必要だって。
それがきっとお姉様の幸せに繋がるんだって。
「はやくりっぱになろうね」
「うん!」
→to be continued.