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氷華血鎖【鳴門】

第9章 零部・過去


だが何故その目が必要か分からないチヅルにとって問題はそこでは無かった。



『兄と弟が…居る…?』



腹違いの兄と弟。兄は二つ上。弟はチヅルより数日後に産まれた同い年。そう。チヅルの父親には妻が二人居た。無論、正式な弥生家の跡継ぎであるチヅルの母親が正妻でチヅルが正妻の長子であるのは間違いは無いのだが父親に母親以外に囲ってる女がいる事にチヅルは大きな衝撃を受けた。それだけでは無い。祖父にも…曾祖父にも…高祖父にも。



『もっと…強くならなきゃ…アタシが母様を守らなきゃ』



強く握り締める拳から血が滴り畳に落ちた血が結晶化する。



『………これ…もしかして』



同時にこの時、遺伝が困難だと言われていた父親の一族の血継限界も引き継いでいる事に気付いた。

それから数年後、チヅルは運命的な出会いをする。



『母様!母様!』



城下に外出中に賊に襲われ母親が怪我を負ってしまう。



「診せてみな」



それを助けたのが伝説の三忍と呼ばれるうちの一人、医療のスペシャリストである綱手さん。その医療忍術に魅入ったチヅルは根気強く頼み込み綱手さんを師とする。その時、同時に母親の腹の中には新しい二つの命が宿っていた事が判明する。
とても喜ばしい事なのに父親は激昴した。



「懐妊だと…!?ふざけるな!チヅルが居れば充分だろう!?堕ろせ!」

「ごめんなさ…」

「ふざけてるのはお前だ!命を何だと思ってる!」

「部外者は引っ込んでろ!」

『父様止めて!母様の分はアタシが働くから!』

「………お前にはまだ早い仕事だ」



そんな問題を抱えながらも何とか無事出産。
綱手さんは必死で止めていた。多分母親の仕事の事を知っていたのだろう。だが母親は聞かず出産後すぐに仕事に復帰。母親が働きに出てる間はチヅルが面倒を見ながら修行。
そんな日々を過ごしていたある日…事件は起きる。



「チヅル…お願いがあるの」

『なぁに?』

「この子達…マツとトシを守ってあげて」

『勿論だよ母様!』



-ポロポロ-



『母様?どうして泣いてるの?』

「ごめんねチヅル…貴女に重荷を背負わせる事になって。ごめんね…無責任な母親で」

『母様?』
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