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氷華血鎖【鳴門】

第9章 零部・過去


「どうしてあの人は私だけを見てくれないの?どうして私を助けてくれないの?」



-ザシュッ…-



懐刀で自らの心臓を一刺し。チヅルの目の前で自害した。

これからが地獄の始まりだった。
若干、十一歳で一族の…この娯楽島、乱宮島の長となり祭り上げられ忌まわしき決まり事を知る事となる。
そう。この島の女は皆、男に尽くさねばならないと言う事。その意味をこの幼さで知ってしまう。



「チヅル、紹介しよう」

『ユキトが兄、シズルが弟』

「…知っていたのか」

『だいぶ前から』

「ならば話は早い。これからお前に仕え調教する役目を与えてある。そして目障りなあの医療忍者は始末する」

『!』



その日の晩。チヅルは綱手さんにこの島から出る様に促す。



「しかし…!それだとチヅル、お前が…」

『アタシは大丈夫です。ですから師匠、早く行って下さい。父様に見付からないうちに』

「………」

『早く!』

「………っ何かあったら木の葉へ行け!話は通しておく」

『二年間…有難う御座いました』



母親が亡くなってからの唯一の心の拠り所だった師匠である綱手さんとの別れ。
そして齢が十二になった頃、更なる地獄が始まった。
乱宮島の島の女である以上、避けては通れぬ運命…調教という名の地獄。それが原因で沢山の女が自ら命を絶ってしまうのを見てきたし理解した。



『ゔ…ぉえ゙っ………げほっげほっ』



-ぐっ…-



『っ!?やだやだやだ!痛い!抜いて!痛い!』



身体全体が張り裂けそうな程、悲痛な叫びだった。成長しきってない未発達な身体が男の侵入を拒む。そんなのが毎夜続いていた。見るに耐えなかった。
調教という名のそんな行為が毎夜続けられてるうちに、いつしか身体は慣れてしまう。そして慣れだした頃、見世に出され民衆の目に晒され沢山の手がチヅルに向かって伸びる。その手がチヅルに触れる前に切り落とされた。
やったのは…チヅル。プツン、と何かが切れた様に全ての感情を失った様に殺戮をする。



「チヅル!お前は何て事をしてくれたんだ!?」

『………』

「くそっ!アイツが死んでやっとお前が商品になりそうだったのに!!マツが成長するまで待てな…」



-バシュッ-



「…い?」
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