第7章 零部・眼
その目も…血継限界。三つの血継限界を持っていると言う事だろうか。だとしたら確かに稀少。
『雪一族の血は高祖母の時代だからかなり薄いし、血遁を使うのは婿に来た父の家系だけど遺伝しにくいらしいし、もう既にアタシ達キョーダイ以外は滅んでるし。そしてこの目は………一族の中でも特殊な女にしか開眼しない』
「特殊…?」
『男という生物を恨み憎み…沢山殺した女だけ』
その女が男から自分を守る為に開眼すると言う。
『嫌な能力よ。身を守る為に欲したのに見たくないもの聞きたくないもの…見えるし聞こえる。でもそのお陰で助かってる部分もある…皮肉なものね』
その能力を欲し、疎んじ、そして救われる。言ってる事はよく分かる。つまりチヅルには俺の全てが見えているのだろう…最初から。
『………、ほら怪我してるんでしょ?診せて』
「いや、このくらいお前の手を煩わせる程では…」
『いいから!』
暖かくて優しいチャクラ。どこからどう見ても感じてもビンゴブックに載る様な犯罪者とは思えない…と言ったところや思ったところできっとチヅルは答えない。今夜は良く喋ってくれた方だとは思う。ちょっとした身の上話を。
『ついでにこの秘湯に入ってウチで休んで行って!どうせ明日の夜には会合あるだろうし次の任務も無いでしょ』
「しかし…!」
『つべこべ言わないで。医者の言う事は絶対』
と胸倉を掴まれてそのまま秘湯に召し物を召したまま投げ込まれる。こんな乱暴な医者が居るとも思えない。
※※※
「いたちにぃにだ…」
「いたちにぃにがいる…」
畳の上で胡座をかく俺の膝に身を乗り出して丸い目で凝視して来る双子。以前よりほんの少し大きくなっていた。
「おしごとおわったの?」
「じゅうぞうおじさんは?」
「十蔵は………えっと…」
-コトッ-
『十蔵さんは遠くに逝ったんだって』
「「とおく?」」
純粋な真っ直ぐな目にどう答えようか迷っていたら台所に立ってたチヅルが朝食を卓上に並べながら言う。
『大丈夫、いつか会えるよ』
「「そっか!」」
『さ、朝御飯食べなさい』
「「いっただっきまーす!」」
白米とお味噌汁。焼魚に納豆とキャベツの浅漬。健康的な朝食を取り囲む様に懐かしみを覚える。