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氷華血鎖【鳴門】

第7章 零部・眼


『そっか!有難う』

「お…おう…まぁその…世話になってるからな!これくらい…」



何かもごもご言ってるのを無視して調味料にもなる漢方薬を御礼に渡す。



「ねぇね、きょうのばんごはんなぁに?」

「わたしおさかなたべたい」

『お魚かー…じゃあ川まで行って獲りに行かなきゃだね』

「え?獲る?捕る?」

『そう捕獲』

「え?いつも大漁な時に村の皆に配ってるのは…」

『川で捕獲してるんだよ』



ぱさっと漢方薬の入った紙袋を落とす。



「ちょっと生きる為の知恵としてついて行っていいですか?」

『別に良いけど…』





※※※





先日、俺と村の皆を救ってくれたこの女神はチヅルさん。親しみを込めてチヅと呼ばせてもらってる…と言うのもたまにチヅの来客が村に来る事があるのだが、その人達がそう呼んでいたからである。
忍では無いらしいが医療忍術を使え、薬剤の調合も出来る凄い子。御両親は居ないらしく幼い弟妹の面倒を見るしっかり者で家事炊事もお手の物の家庭的な女の子。大層整った容姿をしていて多少…否、かなり幼いが齢は十五と立派な女性。



『此処が一番魚が捕れる場所』



と連れて来てもらったのは村から差程遠くは無い、山を少し下った流れの急な川。



『そこに居て』



そう言うと流れの急な川の水面を軽やかに歩いて行くと中心部で止まって水面に手を置く。そして…



-ザッパーン-



まるで大きな岩でも投げ込まれた様な水飛沫が上がり、気付いた時には俺の持ってる桶に大漁の魚。その魚達には細長い針が一本刺さっていてピクリとも動かない。



「死んでる…のか?」

『生きてるよ。ビチビチ跳ねられて逃げられると面倒だから千本で神経を麻痺させてるの』

「ほぉー…」



-ガサッ-



感心していたら背後の茂みからガサガサと音が聞こえ荒々しい息遣いも聞こえる。これは人間のものでは無いと若輩者の俺でも分かる。目が合ったら駄目な類では…と思いつつも自衛本能が相手を確かめたくて振り向いてしまう。そこには想像通り…否、想像以上に大きな猪が居た。



「ひっ…」

『伏せて!』



チヅの言葉に桶を抱き締めながら屈んで目をキツく閉じる。肉を裂く音とかベチャッとナニかが落ちる音が聞こえる。
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