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氷華血鎖【鳴門】

第5章 零部・暁


「ん…ねぇね?」

「ねぇね、くるしい」

『あ御免、起こしちゃったね』

「おはなし、おわった?」

「みんななかよし?」



弟妹の不安そうな瞳に映ったアタシは嘘吐きな笑みを浮かべる。



『うん』

「………おら、さっさと行くぞ。いつまでも子守りしてやる程、暇じゃねぇんでな」



と抱えてる弟妹の首根っこを引っ掴んでアタシから離すと自分の肩に乗せる。弟妹はとても楽しそうにはしゃぐ。



「わーたかーい!」

「じゅうぞうおじちゃんすごーい!」

「おじさんじゃねぇ!!!」

『………』

「行くぞ。時間は有限だ」

『あ、うん』



スタスタと歩いて行く十蔵さんとイタチさんを追おうとしたら、ふいに大蛇丸さんから呼び止められる。



「チヅルちゃん」

『?』

「今度私と…ゆっくりお茶でもしましょう」

一同「………」

『…嫌です』

「速攻でフラれてやがる」





※※※





アジトを発って数日。アジトに居らずとも開かれる会合にはチヅルも必ず参加はする。ただ黙って聞いてるだけなのだが。時々メンバーに絡まれても無視する事が多いがチヅと愛称を付けられるくらいには馴染んでる様子。



-すう…-



と目を開けると真っ暗な部屋に一本の蝋燭が揺らめく様が目に映る。そして左斜め前に十蔵、右斜め前に居るチヅルも静かに目を開ける。



「チヅお前、小南だけには懐いてるな」

『懐いてるつもりは無い。同じ水の国出身の貴方ならアタシが沈めた島がどんな島だったか知ってるでしょう?』

「まぁ…な」



バツが悪そうに視線を泳がせて歯切れの悪い返答。



『だからアタシは女性と子供には優しくありたいの』



そう言えば初めて会った時も小南を見て…小南の言葉を聞いて殺気を消して話合いに応じて居たか。



「…男前だな」

『自分を女だと思った事は………無い』



そう言って目を伏せると長い睫毛が影を落とす。この女はどんな闇を抱えているのだろう。それなのに膝の上で眠る弟妹を見つめる目は酷く優しい。真っ直ぐな愛情を向ける事が出来るチヅルが羨ましく思えた。俺には…出来ない。もう遅い。



『そうかしら?そんな事無いんじゃない?』

「!?」

「………?」
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