第1章 苦悩と別れ
渉「危ない!!」
「きゃあっ」
誰かに腕を捕まれ、後ろに引っ張られた。
引っ張られた勢いで尻もちをつき、持っていた鞄の中身をばら撒いてしまった。
「痛いっ」
私は状況をつかもうと辺りをキョロキョロすると、私の隣でしゃがんで肩で息をしている男性と、私の荷物を拾ってくれている男性がいた。
渉「君、大丈夫?ケガとかしてない?」
呼吸が落ち着いてきた男性は、私の方を向いて話しかけてきた。
「はい、大丈夫です。あのーもしかして、助けてくださったんですか?」
大輔「そうだよ。ワタが気付くのがすこしでも遅かったら、今頃どうなってたか」
そう言って私に荷物を渡してくれた、もうひとりの男性。
「助けてくださってありがとうございます」
ワタと呼ばれているその男性は、立ち上がると私の手を引き、起こしてくれた。
渉「お礼なんていいよ。君にケガがなくてよかった」
大輔「考え事しながら歩いてちゃダメだよ。今度は気をつけてね」
「はい。ありがとうございます」
私はお辞儀をすると、その場を離れた。