第17章 始まった関係
休憩所から少し離れたテラスへ出て通話ボタンを押す。
「も、もしもし…?」
『あ、主人公名前ちゃん?俺俺』
「あ、えっと…二宮さん?」
電話の相手が「はい、ダメー!」と答える。
『だから二宮さんはダメっつったでしょ?
はい、やり直し』
「え…えっと」
" 彼 "を名乗るその人への愛称なんて何にも考えておらず、求められた答えに出たのは
「二ノ、くん」
よく聞く愛称にただ、それを付け足したもの。
『んふふ、それもダメ
でもまあ、この間より進歩したから
今日は許す』
「あはは、ありがとう
で、どうしたの?何か用事?」
初めて2人で食事してから何日か経ったけれど、過ごした時間はまだ短い。
それなのに、これだけ気を使わず彼に心を許す自分に驚く時がある。
それは以前翔くんが言っていた、彼の独特な雰囲気のおかげなのかもしれない。
『ん~今仕事終わってさ、
特に予定ないから電話した』
「………、」
その何気無い電話に、物凄く彼氏彼女を意識して。
『…おーい、聞いてます?』
「あ、うん!ごめん、ごめん」
『あなた今日仕事終わって空いてる?』
「うん、何もない」
『そ、じゃあ車回すから、
終わったら連絡して?』
「うん、わかった」
『じゃ、よろしく』
そう言って電話を終えると、やっぱり二宮さんは気を使わない人だな、と改めて実感する。
最後なんて、友達に似た感覚で。あれ、付き合ってるのかな、とか考えた。
二宮さんはもう翔くんに言ったのかな、このことを。