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君の声で

第16章 嘘、ほんと









そう問いかける彼の平然とした顔を見て胸がキュッと苦しくなった。





もう諦めたはずなのに" 幼馴染 "だって決めたはずなのに。

やっぱり見込みがないとわかると、8年経った今でもこんなに苦しくなるなんて。





二宮さんの言う通りかもしれない。

私がこんなんだから前に進めないんだよね。









「実は、さっき彼氏が出来ました」

「え、さっき…?」



彼が驚いたように聞き直すと、母が嬉しそうに



「じゃあ、その人と一緒だったってこと?」



「うん」と返事をする。

嘘じゃない、嘘じゃ、ないよね。






「会社の人?」

「あ、違うの」

「え、どこで知り合ったの?」

「…翔君なんかお父さんみたい」



彼の顔があまりにも真剣だったから。



「だって!心配じゃんね、おばさん!
 あの主人公名前ちゃんが彼氏って!」

「ちょっと!翔くん私だって 恋の1つや2つ…」





言ってる途中でなんか虚しくなった。

そうだよ、 私だって恋くらいするんだ、ずっとずっと忘れられない人くらいいるんだよ。



「あはは、ごめんごめん
 俺が心配しなくてもちゃんと
 傍にいてくれる人、いるんだもんね」



翔くん、そんな風に言わないで。

また私の気持ちがグラグラ揺れる。





翔君じゃないとダメだって言ったら、ずっと傍にいてくれるの?

" 幼馴染 "をやめて、翔君の" 特別 "にしてくれるの?

バカだな、私。諦めるって覚悟してもまだ、こんな望みが出てくるなんて。



「そうだよ。もう私、28だよ
 いつまでも子供じゃないんだから」



それはまるで自分に言い聞かせるように。




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