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君の声で

第15章 あの人との食事








そんなことを考えると、自然に「はあ…」とため息が出てしまう。




「……、」

「あ、笑ったね!今笑ったでしょ!」

「だって、そんなあからさまに
 私歳とったな、って顔すっから」

「あはは、バレました?」

「主人公名前ちゃん、彼氏いないの?」

「残念ながら」

「ずっと、好きな人がいるとか?」



上目遣いでこちらを見る彼のその言葉にドキっとした。



「え、や、だなあ。いませんよ、そんな人」



隠そう隠そうとする気持ちに、またジワっと汗が出る。そんな私に「へえ、よかった 」と言って彼はニッコリと微笑んだ。



「ぜ、全然よくない…んですけど」



ちゃんと聞いていたのだろうか。

28の女がお付き合いしている人もおらず、好意を寄せる人もいないと言ったのに。



「ああ、そっか、ごめんごめん」



その意味を理解したのか、笑って謝る彼が



「ねえ、俺たった2個下よ?」



とまたもや年齢の話題を振ってくる。

た、たった…!
今" たった "と言いましたか、二宮さん。



「28の孤独女子には" たった "2つでも
 十分大きいんですよ」



このセリフをまさか自分が言う年齢になるなんて。

当たり前に年齢を重ねて、当たり前に生きてきたけれど。このポッカリ空いた彼への気持ちはいつになったら解決するのだろう。



「ふふ、俺は気にしませんけど
 2個下から口説かれるのはやっぱり嫌?」

「そんな、勿体無い話
 声かけてもらえるなんて嬉しいよ」



私も歳をとったな、と笑ってしまった。

「ほんと?よかった」と目を細めるその人が



「じゃあ私と付き合ってよ、主人公名前ちゃん」



なんて、言ったのが聞こえたから、「あはは、今なんて?」と軽い気持ちで聞き返した。



「だから、付き合おうよ、俺と」



2回目も聞こえた" 付き合おうよ "。

芸能人の彼が私に言うセリフではないし、初めてに近い関係の私に言うセリフではないし、そもそも言うはずが、ないし。







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