第13章 8年経って
「櫻井翔出てこい!
君に言いたいことがあるんだー!」
それは山頂へ叫ぶように語尾を伸ばす。
目を丸くするお客さん全員が口をあんぐり開け、こちらに向けるその視線があまりにも痛すぎて。
慌てて自分の席を立ち彼女に駆け寄った。
「お、お願いだから座って!」
小声でそう頼むと、力が抜けたようにその場にストンと座る彼女。
「はは、ちょっとスッキリしたかも」
「…ばか、」
そう言って笑う私につられて、私も笑った。
視線を合わせ、大笑いする彼女のそれが急に止まる。
「……、」
「何、どうしたの」
さっきまで細かった彼女の目が急に大きくなり、微動だにしないその瞳の奥。
それは私に向いていると思いきや、微妙にズレる彼女の視線に気がついた。
また嫌な予感がして、恐る恐る後ろを振り返ると
「あ、えっと…、お呼びでしょうか」
そこには少し警戒した表情で、律儀に右手を上げる男性の姿。