第13章 8年経って
あの頃、翔くんのことを好きだと言ってた私に彼を丸ごと支えるなんて、そんなこと出来なかったと思う。
彼には仕事があって、アイドルという立場があって、それに対して私は凄く幼かった。
大人、と言える年齢になって。最初のうちはいつも通り連絡もあり、突然かかってくる彼からの電話の後ろで女の人の声が聞こえたこともある。
そりゃそうだよ、翔君だもん。
忙しい彼と" 幼馴染 "として会う機会はほとんど無くなり、いつの間にか電話の回数も減った。
その代わり『元気にしてる?』その確認メールが入る。
メールは好きだ。知りたくないことは聞かなくて済むし、動揺したり歓喜したりする心臓の音もバレない。でも、元気にしてることはわかるから。
彼の声を聞くと、きっと今でも私は" 幼馴染 "の居場所を失くしてしまいそうになる。
あの日の想いが伝わることなんてないけど、それでもまだ彼の記憶に私の居場所があるなら。
それだけで十分だ。