第2章 幼馴染
「あっちいっ!
いっつもこんなことして
学校来てんの?マジすげえな」
私のストレートで短い髪をボリュームアップさせるために、眉間にしわを寄せながら慣れない手つきでコテをあててくれる彼。
「翔君、いいよ髪の毛なんて
どうせぐちゃぐちゃだし誰も見てないし」
人前に出ても大丈夫なように、必要最低限のメイクをしながら鏡越しに彼を見る。
「でもなんかいい感じになってきた
こっちの方が可愛い」
と満足気に私の髪を見て。
「え、ほんと?もてる?」
「うん、もてるもてる」
そう言って呆れたように笑うのも束の間
「楽しんでる暇はない」
と我に返った彼に平手チョップをくらった。
痛くなった部分を両手で押さえてやっと自分の置かれた状況に気付く。
そうだった。
進級がかかってるんだった。
「えっ、もう12時30分だよ!
無理だ、間に合わない」
今まで緊張と焦りでピシッと伸びていた私の背筋が、その現実を思い知らされ見事に崩れると、彼が間髪入れずに再びチョップを入れる。
「ほらまたすぐ諦める。行くよ」
そう言って先に立ち上がった彼が、崩れた私の腕をグイッと引っ張り勢いよく部屋を出た。
部屋の前にある階段を私の手を引っ張りながら慣れたように下りる背中に
「もう無理だよ」
と弱音を吐いて。
ここから電車と徒歩で学校へ行くに
最低でも40分はかかる。
現在時刻12時35分。
もう間に合うはずはない、と諦めかけていた私。
さよなら、翔くん
今日で同級生にピリオドです
と心の中で別れの挨拶を告げた。