第5章 変わらないもの
「んだよ、 だからおかしかったのか!
お前さっき焦ってただろ?」
ふっ、と笑った三井君。
やっぱり私の下手な演技なんてお見通しか。
「だ、だって」
「俺らはそれ知っても
お前に対してなんも変わんねえよ」
「うん…、 わかってたんだけど
ごめんね、黙ってて」
「いいって。あ、佳奈は
ちょっとうるさそうだけどな」
罪悪感の残る私に、いつもの白い歯を見せて「めんどくさいよな?」と言ってくれるのは三井君なりの優しさだ。
「ふふ、ありがとう、三井君」
別に、と照れたように言った彼が、何かを思い出したように表情を変える。
「やべ、佳奈もお前のこと探してんだった」
「え!うそ!」
「俺は戻るけど…?」
そう言って三井君は翔くんの様子をチラッと伺うと、私に向かって「腕、手当するから」と言い、握る手に力が入れられる。
彼のおかげで痛みが消え、すっかり忘れていた赤い腕の状態。すがにこのまま放っておく訳にはいかず。
「ごめん、三井君
佳奈にもありがとうって
伝えてくれる?」
ん、と相づちを打った三井君。
「このことは言わねぇから
お前から言えよ」
「うん、ありがとう」
三井君は「また明日な」と言って、佳奈の元へ走って行った。