第5章 変わらないもの
「…今朝主人公名前ちゃんが
教室でこけた時、周りのヤツが
ああゆうのマンガみたいで
超可愛いとか言ってて。
しかも起き上がったあなた見て
すげぇ可愛いとか言ってて。
俺は…ハラハラしたわけですよ」
眉間にシワを寄せる彼。同じ行為でも先程とは違い、笑える余裕をくれる。
「あはは、翔君が
髪の毛やってくれたから」
「ほら、あなたのんきね。
わかってんの?
あんまし男得意じゃないでしょ?
そんな隙ばっか見せてっとね、
色んなのが寄ってくんぞ、ばか」
「ば、ばかって…今日ひどいなあ」
ふふ、と笑った彼が
「ごめん、つい。ちょっと八つ当たり」
といつもの表情に戻る。
「ううん、心配してくれてありがとう。
私しっかりするよ」
昔とは違う男の人らしい大きな手に、昔とは違う安心する低い声、目の前にいる私よりも背の高い彼を見て
「なんか…、逆転しちゃったなあ」
そう実感した。
「逆転?何それ」
ははっと笑う顔は、昔と何も変わらない。泣き虫翔君と同じ、優しいままで。
「うんん、何でもない」
変なの、と笑う彼にセンチメンタルになった私。