第21章 大切だったのは
佳奈ちゃんが教えてくれた場所に移動すると、空のグラスを持ったまま椅子に腰かける君を見つける。
「主人公名前ちゃん、」
声をかけると驚いたような表情で
「翔君…、来てたんだ」
なんだかぎこちない君。
やっぱり辛いの?まだ、好きなの?
それを忘れるためにニノと付き合ってるの?
聞きたいことが沢山あるのに、全て喉から出てこない質問ばかり。
「うん、今来たとこ」
「佳奈達には会えた?」
「うん。さっきおめでとうって言ってきた」
「佳奈、すっごく綺麗だったよね」
とびきりの笑顔で笑う君を久しぶりに見た気がする。
昔はすごく近くにそれがあったのに。
「…無理しなくていいよ、俺の前では」
「え?」
「…まだ好きなんでしょ、三井君のこと」
知ってたよ。
ずっと前から。
2人が結婚するって君が嬉しそうに言うもんだから、頭の整理がつかなくて。
「……、どうゆう…」
「ニノも言ってた。主人公名前ちゃんには
ずっと忘れられない人がいるって。
主人公名前ちゃんまだ三井君のこと」
「しょ、翔君…!」
いっぱいいっぱいで気づかなかった君の表情。