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君の声で

第19章 取らない電話









「あ!卵がない!」

「ええ!なんだってこんな大事な時に!」

「ちょっと、買ってくるから
 2人で仲良く食べてなさい!」



エプロンを外しながらバタバタと家を出ていく母。



「え、あ、ちょっと」

「仲良く、だって」

「あ、はは。
 ってほんとに来たんだね」



二宮さんの隣に座る。



「いやあ、会いたくなっちゃって」



そんなテンションでそんな低い声で言われたら冗談なのか、本気なのかわからない。



「あ、うん」

「あ、うんって」

「なんて言っていいかわからないよ」



ふふ、というその含み笑いでいつも反応に困ることを言ってくるのはわざとだと思う。



「あ、そうそ
 言ったよ、翔ちゃんに」

「…そっか、ありがとう」

「驚いてたよ、かなり」

「そっか、そりゃそうだよね」

「でもって、
 ずっと好きな人がいることも
 言っておいたからね」

「…ええ!」

「まだその人のこと好きだってことも」

「い、や!なんでー!」

「これくらいしないと気づかないよあの人」

「いや、でも、」

「なあに、あなたがほんとに
 俺と付き合ってくれるんだったらいいけど」

「え!?」

「この付き合いは
 諦めるためじゃないでしょう?」














妖美な微笑みで私を見る彼が言う。






「これはフェイクなんだから」


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