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君の声で

第19章 取らない電話








「……」



ただ呆然と立ち尽くす、仕事終わりの私。



「きみちゃん、これうまいね。」

「うふふ、かずちゃんったら、
 ほんと上手なんだから~!」

「なんでよ、お世辞じゃないから」

「もう!いっぱい食べてね♡」



なぜ、なぜ母をきみちゃんと呼んでいるのですか二宮さん。そしてなぜ、私の家に居座っているのですか二宮さん。

確かに今朝「帰りを待っていてもいいか」と聞かれたけれど、それは「家で」という意味だったのですか、二宮さん。




ダイニングテーブルでパクパク食事をする彼と、まるで新婚の奥さんかのように浮かれている母が台所で料理をする。

娘不在の中、一体どんな状況だ。



「ただいま…」

「あ、おかえり主人公名前ちゃん!
 きみちゃん、娘がご帰宅だよ!」

「あ、おかえり主人公名前!
 あんたいい人捕まえたわね~!」

「え!」



二宮さんを見るとモグモグしながら、何?という顔で平然としている。



「もう話しちゃった」

「話しちゃったって…何を」

「ん?娘さんを僕にくださいって」

「はい!?」

「うらやましいわ~、
 私がもう少し若かったら!」



若かったらなんですか、お母様。



「んふふ、きみちゃんって可愛いよね」



私を見て笑う二宮さん。



「可愛いって…いや、そもそも
 きみちゃんって…」

「え、貴美子でしょ?」



と聞く彼に



「はい、貴美子です」



と真顔で答える母。

ほら、合ってんじゃん!と声をあげて笑う。



「あ、それとも何?やきもち?」



また意地悪な顔してこっちを見る。



「ち、違います!」



やっぱり…調子狂うな。







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