第19章 取らない電話
ブルルルル――――
テーブルに置いてある二宮さんの携帯が震え、それを横目で見る彼。
「…」
「出た方がいいんじゃ…」
「いいの」
そう言って急に私の肩を引き寄せた。
「にの、くん…?」
まだ震える携帯の光る携帯画面が目に入った。
ディスプレイには女性の名前、その名前は直感的に二宮さんの思う人だとわかる。
「あの、電話…」
「うん…、」
「……、」
鳴り響く携帯の振動、私の肩に触れる手も震えているような気がした。
それに何も言えなくなり、ただ黙ってその細い腕に抱かれる。
何かと葛藤するような彼の行動、この気持ちをわかってあげられるのは「今私しかいないんだ」そう思って。
そっと、背中に腕を回した。
携帯が止まると、少しだけ彼の腕の力が緩んだのがわかって。
「…だめだ、俺」
と物凄く弱い声。
「主人公名前ちゃんには
偉そうなこと言ったくせに
自分のことになるとまだ怖いや」
渇いた笑いが聞こえて、体を離した。
いつもの余裕のある顔じゃなくて力のない顔で見つめられる。
誰かを見て胸が締め付けられるような、こんな感覚は久しぶりだった。
「ニノくん、」
この時間が無駄だとは思わないけれど
二宮さんには
この時間さえも大切にしてほしいと思ったから
私と傷の舐めあいをするよりも
大切な人に大切なことを
伝えて欲しいから
今の思いを伝えようと口を開いた。