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君の声で

第17章 始まった関係









凄いタイミングに、口の動きも止まってしまう。



「彼氏が出来たとは、言ったんだけど」



自分から聞いておいて「そ」となんともまあ興味なさげなお返事。



「言った方がいいのかな」



翔君を忘れたいとこの付き合いを選んだ私。

それを言ってしまえば、二宮さんとの繋がりがずっと続く彼とも、必然的に関係は続くわけで。





「そおねえ」とモグモグ口を動かし、視線を斜め上にやる二宮さん。



「言わなくてもいいんですよ?私は」

「…え?」

「言ったでしょ、任せてって」

「うん、」

「あなたが有利になることだったら
 何でも協力するよ、俺」



二宮さんが何のことを言っているのか、すぐに理解できなかった私。それを察してか補助するように。



「付き合ってる相手、俺って知らせて
 動揺させたいんだったら言うし
 もしも気まずいなら言わないし」

「…二宮さん、どういう」

「だってこのままじゃ、
 諦められないでしょ?」



諦められない…?



「……、あ、いや、だから諦めるために」



そのために二宮さんが彼氏になってくれたんじゃないんですか?



「俺、諦めなさいなんて
 言ってないけど」



ニヤリと口をつり上げ、上目遣いでこちらを見る彼の言葉に益々混乱が広がる。



「待って、言ってる意味が」

「なんで翔ちゃんへの気持ち、
 そんな無理矢理忘れたいの?
 ごめん、って断られてないじゃんまだ」

「だって、…断られたら終わりじゃない
 気まずくなって、関係が無くなって…、
 それが怖いから」



言葉が早足になる。

気持ちを素直に言えてたらこんな…、8年間も待ったりしない。

グッと、喉に詰まる何かを抑えて飲み込む。



「だから私がいるじゃない」



二宮さんの言うことは、いつも唐突だ。

また私が理解できず、その言葉の続きを大人しく待つ。

すると、ゆっくり笑って。



「気まずくさせたり、しないから」



なんだろう

話すスピード、間合い、表情のせいだろうか。

二宮さんの根拠もない推測に近い自信は、私を安心させてくれる。



「2人なら怖くないよ」

「ふたり、」

「うん、私と、あなた、
 1人じゃないと結構強くなれんだよ人って」



何かが隠れた、その言葉。




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