第24章 影あそび
だらしない顔を隠すように下を向いたら、当然だけどまだ手を繋いでる俺たちの影が視界に入った。
…でも今は俺だって繋いでるもんね!
変な対抗心がむくむくと湧いてくる。
にっこり笑い掛ければ、カズも可愛く笑ってくれて。
…影じゃこんな可愛い笑顔は見れないだろ!
きゅっと手に力を込めてみれば、カズも同じように握り返してくれて。
…影はこの手の柔らかさもあったかさも感じられないだろうしな!
心の中で1人延々と影との勝負を繰り広げる。
影相手に何言ってんだって話かもだけど。
カズに関してのことなら例え影にだって負けたくない!
そんな俺の静かな戦いにカズが気付くわけなくて。
「翔ちゃん、見て見て!キツネー!」
潤たちに感化されたのか、片手で出来る影絵を作って無邪気に遊んでいる。
めちゃくちゃ可愛い!!
微笑ましく見守ってたら
「翔ちゃん、そっちの手貸して?」
カズに繋いでない方の手も掴まれて。
手を開いてとか閉じてとか、楽しそうなカズに言われるままに動かすと、それにカズが自分の手を合わせて。
「かにー」
「はとー」
影が次々と形を変えて行く。
にこにこご機嫌なカズは可愛いし、2人で一つのものを作り上げていくのが嬉しくて楽しくて幸せだ。
「楽しいね。次はどうする?」
「えっとねー、じゃあ指曲げて?親指は下にして…」
「こう?」
「そう」
カズも手を同じ形にしてくっつける。
「ハート…なんちゃって///」
えへへと赤くなって照れ笑いしてるカズが可愛すぎてぶっ倒れそう。
こんな可愛いカズが見れたのは影のおかげか。
…仕方ない。
可愛いカズに免じて、この勝負は引き分けにしてやろう。
地面の俺とカズの真ん中、手を繋いだちょうどその上に小さなハートマーク。
幸せな気持ちでその影を見つめた。
end