第3章 手紙
ーMsideー
雅紀に聞いた噂話。
昨日の今日でもうそんな噂になってんのか。
相変わらず情報が回るのが早いな。
しかも内容が正確だ。
まぁ、昨日の先輩が自ら喋ったのか何なのか分からないけど。
この噂のおかげで、ニノに手を出そうもんなら翔が黙ってないってことがよく分かっただろうし。
ついでに翔が怒ると怖いってことが広まればニノへの手紙も呼び出しも減るんじゃねーかな。
手紙に関しては、そもそも名乗る勇気もないようなやつらなんだから、翔を敵に回してまで続けないような気がする。
きっともう落ち着くだろう。
雅紀だってニノの身に起きたことは知ってるはずだから、噂を聞いて心配していたんだろう。
ニノに何もなかったと聞いて安心したように笑った。
でも明るくからかうように話していた時も、笑っている今も、その顔はどこか寂しそうで。
赤くなるニノを見つめる瞳は苦しそうだった。
俺の想像通り雅紀もニノを好きなんだとしたらどんな気持ちでこんな噂を聞いたんだろう。
智も雅紀の様子に気付いていたようで、ニノと翔がトイレと席を離れると優しく声を掛けた。
「ニノはわざと雅紀に言わなかったわけじゃないよ?」
「···分かってる。でもちょっと拗ねた。だって2人は知ってたんだろ?」
口を尖らせる雅紀は本当に拗ねているようで。
確かにこの状況だと仲間はずれにされたような気になってもおかしくない。
でもそれでも裏でグチグチするわけでもなく、素直に感情を口に出来る雅紀に素直に感心してしまった。
「素直だな」
「雅紀の長所だよ」
智は柔らかく笑うと、雅紀に謝った。
「ごめん。でもニノのことだから勝手に話せなかったんだ」
「うん···分かってる。俺こそ子どもみたいに拗ねて八つ当たりしてごめん」
素直に謝れる雅紀はやっぱりすごいと思う。
「全部落ち着いてニノの中で整理がついたらさ、いつかニノから話してもらおう」
「ニノが話すかなぁ」
「ふふっ、気長に待とうよ」
智と穏やかに笑い合う雅紀は、ニノたちが戻る頃にはいつもの雅紀に戻っていた。