第20章 想い届く
「ごめん、ニノ…ごめん、潤…」
唇を噛み締めて俺にまで頭を下げる智に、何も言葉を掛けられないでいたら
「でも、もう逃げない……潤!」
きっと顔を上げた智に、まっすぐ見つめられた。
睨むようなその視線を真正面から受け止める。
「俺も潤が好き!だから…俺と付き合ってください!」
真っ赤になって、それでも目を逸らすことなく伝えられた智の気持ち。
さっきのは聞き間違いじゃなかったのか…
もちろん嬉しいはずなんだけど、なんだかにわかには信じられなくて。
呆然としながら、今言われた言葉を頭の中で繰り返す。
“俺も潤が好き”
真剣な眼差しにも、まっすぐな言葉にも、赤く染まった頬にも。
そのどれにも嘘はなくて。
じわり…と喜びが胸に込み上がってくる。
智が俺と同じ気持ちを持っていてくれたなんて…
“俺と付き合ってください”
そんなの答えはYESに決まってる!
急激に気持ちが昂ぶってきた。
嬉しくて幸せで、その感情のままに智を抱き締めようと手を伸ばす。
それなのに…
「ねぇ、ニノ…」
智は俺の返事を待たずに、くるっとニノに向き直ってしまった。
ええぇ〜…
虚しく宙を切った手を見つめて、途方に暮れる。
「ニノは俺に幸せになれって言ってくれたけど、俺の幸せにはニノが必要なんだよ!」
でも一生懸命ニノに訴える智を見ていたら、ふふっと笑みがこぼれて。
まぁいいかって思った。
とにかくニノとのことを何とかしないと、智も前に進めないだろうし。
そもそもニノを優先しろと言ったのは俺だ。
その気持ちは嘘じゃない。
こんな状況でも微笑ましく思ってしまう自分がいる。