第20章 想い届く
落ち込んでるのは翔と智だけじゃない。
雅紀の落ち込み方も相当なものだった。
自分が余計なことをしたせいでニノと翔の仲が拗れて、更にはニノと智の関係までおかしくなってしまったと…
全部自分が悪いんだと、ずっと自分を責めている。
確かにこの状況を作ったキッカケは雅紀だけど。
ニノと翔に関しては、バレンタインにニノが失恋したと誤解した時点で、雅紀が何もしなくてもいずれ今と同じような状況になっていたんじゃないかと思う。
それが早かったか遅かったかの差だけだ。
雅紀はニノのことを思って動いたんだし、責められるようなことは何もない。
あえて言うなら、間と運はものすごく悪かったと思うけど。
結果的には、おそらく雅紀の最初の目的であったであろう、翔に告白の絶好のチャンスを与えたんだから。
翔が活かすことさえ出来ていれば、すべて丸く収まってたはずなんだ。
だから悪いのは雅紀じゃない。
ヘタレた翔だ。
でも俺がどれだけ真剣にそう伝えても、ただの慰めだとしか思えないのか、雅紀の表情が晴れることはなかった。
そんな雅紀のそばには常に風間が寄り添っていた。
どうやらあの作戦は風間と一緒に考えたものらしく、しきりに雅紀だけが悪いんじゃない、案を出した自分にも責任があるんだと繰り返していた。
なんとか雅紀を励まし支えようと一生懸命な姿に感じるものがあったが、それは口には出さずに俺の胸にしまっておくことにした。
たぶん雅紀は気付いていないし、ニノヘの想いもまだ完全に吹っ切れてはいないだろう。
それでも、風間の存在は今の雅紀には大きいだろうなと思ったし。
俺がこんなこと言うのはおかしいかもしれないけど、雅紀にそういう存在がいてくれて良かったって…なんだかちょっと安心した。