第19章 勘違い
“今まで通りには出来ない”
“そばには居られない”
翔ちゃんに伝えながら、自分の言葉が胸を抉ぐる。
胸が痛くて痛くて堪らない。
でも泣なかい。
笑え!笑顔を作れ!
「ずっと翔ちゃんの優しさに甘えててごめんね。今までありがとう」
もしかしたら、翔ちゃんとちゃんと向き合うのは、これが最後かもしれないんだから。
不細工な泣き顔じゃなくて、笑顔を翔ちゃんの記憶に残したい。
でも作り笑顔も長くは保たない。
涙が出る前に翔ちゃんに背を向けた。
もう疲れた…
辛い…しんどい…
早くここから立ち去りたい。
そう思ったのに。
「カズ!待って!」
翔ちゃんに手を掴まれて、びっくりして振り向いてしまった。
翔ちゃんは何か言いたそうな顔をしていて。
もしかして…
いやだって言ってくれるのかな?
これからも友だちでいようって?
…なんて。
ほんの少し期待してしまって。
ドキドキしながら翔ちゃんを見つめる。
でもどんなに待っても翔ちゃんは何も言ってくれなかった。
そりゃ、そうだよ。
俺がそばにいれないって言ったのに。
翔ちゃんには否定してほしいなんて。
なんて自分勝手なんだろ。
自分で自分に呆れて、少し笑ってしまった。
なんで引き止められたのか分からないままだけど、翔ちゃんは喋る気配がないし…もういいよね。
そっと翔ちゃんの手を外す。
大好きだった翔ちゃんの手。
触れるのもこれが最後だね。
「バイバイ、翔ちゃん」
もう振り向かない。
ちょっとでも早く、ちょっとでも遠くへ行きたくて。
前だけを見て全力で走った。