第19章 勘違い
ニノを抱き締めながら悩んでいたら
「智、ごめんね…」
小さな小さな声が腕の中から聞こえた。
今日初めて聞いたニノの声は消えそうに小さくて、すごく悲しそうで。
…って言うか、俺に謝る意味が分からないんだけど。
「何を謝るの?」
「ごめん…ごめんね…」
聞いても、謝るばかりで答えが聞けない。
「ニノ?謝らないでよ」
ごめんごめんと繰り返すニノになんとなく嫌な予感がする。
ニノの思考は突然変なところにぶっ飛ぶことがあって、俺には理解出来ないことが多いんだけど。
今、絶対ロクなこと考えてない気がする。
でも具体的に何を考えているかまでは分からないから、俺にはただニノを抱き締め続けることしか出来なかった。
昼休み。
先生が居なくなるのと同時にニノの姿も消えていて。
今日はずっと全く動かなかったから油断してた。
あんな今にも消えそうなニノを1人にしたくない。
「潤!ニノがいない!」
思わず潤に声を掛けたけど、潤が返事をするより先に翔くんが教室を飛び出して行った。
「智、俺たちも行こう!」
潤と一緒に翔くんの後を追う。
「智、ニノが行きそうな場所分かるか?」
走りながら潤に聞かれて考える。
「うーん…中庭…かな」
根拠なんてないけど、なんとなくそう思った。
あえて理由をつけるなら、ニノはあまり冒険しないから行ったことない場所に1人で行かないだろうなって。それくらい。
「翔!中庭!」
潤が翔くんの背中に向かって叫ぶと、翔くんは返事の代わりに片手を上げて。
一気に走るスピードを上げて、その姿はあっという間に見えなくなった。
足が速いのは知ってたけど、こんな速かったっけ?ってくらい速い。
そんなに必死になれるなら、もっと早くさぁ…
ため息を吐きつつ、俺も潤と一緒に中庭を目指した。