第18章 バレンタイン

「そうだけど…何？俺が作ったなんて気持ち悪くて食べたくない？」

少し悲しくなる。
男が作ったお菓子なんてやっぱり嫌なのかな。

みんなだってあんなに翔ちゃんにチョコあげたらって言ってたのに。

やっぱり揶揄ってるだけだったのかな。

真に受けちゃってバカみたいだったかな…

「いやいやいや！」
「気持ち悪いなんて思うわけないじゃん！」
「ニノの手作りなんてお願いしてでも食べさせてもらいたいけど！」

ますます気持ちが落ち込む俺に、みんな慌てたように慰めの言葉を掛けてくれる。

でも口ではそう言うのに、実際には誰も食べてはくれなくて。

みんな優しいからいらないって言えないんだ。

悲しいけど仕方ない。
無理強いは出来ないもんね。

智なら甘いもの好きだから喜んでくれるかと思ったのに、智も食べてくれてなくて。

「智もいらない？」
「食べるよ。翔くんが戻ってきたらね」

聞いてみたら、ふにゃりと微笑んだ。

「なんで？翔ちゃんは関係ないでしょ？」
「あるよ！翔が帰って来たらみんなで食べるから待ってろって」

潤くんにまでそう言われて。

なんで？
なんで翔ちゃんを待つの？

よく分からなくて戸惑ってたら

「それ何？」

翔ちゃんが戻ってきた。

翔ちゃんが手ぶらなことにまた安心してしまう。

「これはニノが···」
「カズ？もしかして手作り？」

潤くんが答えようとしたのを遮った翔ちゃんの声が、少し低くなった気がした。