第18章 バレンタイン
「急になによ?」
ニノは呆れたような声を出したけど、その手はちゃんと俺の背中にまわってて。
本当に可愛いなぁ、もう!
「絶対ないけど!それでも万が一翔くんがニノのチョコを受け取ってくれなかったら、俺が翔くんをボコボコにしてあげるからね」
もちろん冗談でもなんでもなくニノにそう伝えたけど
「ふふっ、智が本気出したら本当に翔ちゃんがボロボロになっちゃうからダメー」
ニノは本気に取らなかったみたいで、クスクス笑った。
それでも、翔ちゃんが痛い思いするのは嫌だから翔ちゃんをいじめないでね…なんて、真剣な目でいじらしいことを言う。
ニノが悲しむことはしたくないけど。
それでもニノを傷付けるようなことがあれば、それが翔くんであっても俺は許さない。
ま、あの翔くんに限ってそんなことは絶対しないだろうけどね。
ニノのことが本当に大好きで本当に大切にしてるんだから。
「ねぇ、俺のことばっか言うけどさ。智は?智も潤くんにあげるの?」
また並んで歩き出したら、ニノがワクワクしたように俺を見た。
「いや、あげないけど」
「なんで?!」
当然そんなつもりないから正直に答えたら、ニノが驚いたように目を丸くした。
そんな驚くことじゃないと思うのにな。
「…あ、そっか。買いに行くの恥ずかしいよね。俺と一緒に作る?」
ニノはすぐに立ち直ると、今度は何やら1人で納得してお菓子作りに誘ってくれるけど。
そういう問題じゃないんだって!
「いやいや!そもそも俺が潤にあげるなんて変でしょ!」
つい力いっぱい否定してしまったら
「変…?」
ニノがショックを受けたように呟いた。