第18章 バレンタイン
ーNsideー
なんかうまく乗せられた気がするけど。
あれから毎日のように智や潤くんに、翔ちゃんにチョコあげなよ絶対喜ぶから…って囁かれ続けて。
ちょっと洗脳されたのかな?
いつの間にか渡す方向で考え始めてた。
でも翔ちゃんが喜ぶってみんなも言ってたし。
去年全部受け取ったなら、俺からの友チョコだって受け取ってもらえるはず。
そんな前向きな気持ちになってる。
でも同時に不安もたくさんあって。
何て言って渡せばいいんだろ?
逆に友だちだからこそ渡しにくくない?
そもそも俺がチョコ売り場に買いに行くとかおかしいよね?
じゃあ手作り?
男なのに、バレンタインに翔ちゃんのためにチョコ作るとか…そんなの翔ちゃんを好きって言ってるのと同じじゃない?
無理無理無理無理!!!
冷静に考えると無理な気しかしない。
あげたい気持ちと無理だと思う気持ちの間で悩んで悩んで。
困って姉ちゃんに相談してみたら、姉ちゃんはあっさり解決策を提示してくれた。
「私と一緒に作ればいいじゃない。それで姉ちゃんに手伝わされた~とか、余ったから~とか言えば渡す口実にもなるでしょ?」
すごい!
それなら色んな問題が全部解決する!
「その代わり本当に手伝ってよ?本命と義理と友チョコ作るんだから」
姉ちゃんがイタズラっぽく笑った。
確かに姉ちゃんは毎年バレンタインにものすごい量のお菓子を作ってる。
推薦で大学が決まった姉ちゃんは受験から解放されて余裕があるから、今年も大量に作るらしい。
でもそれくらい全然いい!
翔ちゃんに手作りのチョコをあげるなんて、考えただけでドキドキするけど。
一応確認したら、翔ちゃんチョコ好きだって言ってたし。
姉ちゃんとお菓子の本見て何作るか考えたり、一緒にラッピング用品買いに行ったりして。
どれなら翔ちゃんが喜んでくれるだろうって悩む時間も何だか楽しかった。
きっと世間の女子たちもこんな気持ちでバレンタインの準備してるんだろうな。