第18章 バレンタイン
ーNsideー
「ねぇ、翔ちゃんはチョコレート好き?」
2月頭の何でもない日。
聞きたかったことを翔ちゃんに聞いてみた。
「え?普通に好きだよ?急にどうしたの?」
「ううん、聞いてみただけ」
翔ちゃんはちゃんと答えてくれたけど、ちょっと不思議そうな顔してる。
そりゃ、そうだよね。
何の脈絡もなく突然聞いたもんね。
でも俺は答えが聞けて満足だ。
翔ちゃんがチョコ好きなら、ちょっと頑張って見ようかなって思う。
そもそものきっかけはクラスメイトたちとのお喋りだった。
翔ちゃんが日直でいなくて、智や潤くんと待ってる時に、一緒に喋ってた斗真がもうすぐバレンタインだって言い出したんだ。
チョコ欲しいとか、彼女欲しいとか。
最初はそんな他愛もないことだった。
それが、そこから去年のバレンタインの話になって。
周りにいたやつらも面白がって話に入ってきて。
翔ちゃんと潤くんが大量のチョコをもらってたって聞いた。
近隣の女子校の子たちが校門に殺到して大騒ぎだったらしい。
それとうちの学校のやつらからも、いっぱいもらってたって。
2人とも人気者だもん。
文化祭の時とかを思い出せば簡単に想像つくよね。
いちいち断るのも大変なレベルだったから、お返しはしないという条件で全部受け取ってクラスのみんなで食べたんだって。
そんな話聞いたら、どうしたってモヤっとしちゃうけど。
翔ちゃんがモテるのは当たり前だし。
俺が何か言える立場でもないし。
俺には関係ないと思って、モヤモヤを押し殺しながら黙ってた。