第3章 手紙
ーNsideー
あの日から1週間。
本当に翔ちゃんはずっと側にいてくれてる。
登校も下校も、学校にいる間も授業以外のほとんどの時間全部。
あれから丸山くんが近付いてくることはない。
元々クラスが1組と5組で廊下の端と端だし、使う階段も違うから、会うことはあまりない。
それに、たぶん丸山くんが意識して俺に姿を見せないようにしているんだと思う。
俺が忘れてって言ったから。
俺がなかったことにしたいのを分かってくれたんだろう。
それでも、ごくたまに遠くに姿が見えることはある。
同じ学校で同じ学年なんだから仕方ない。
仕方ないけど···
丸山くんは絶対近くに来ないけど、その姿を見るだけで俺はすくんでしまって。
そんな時は、翔ちゃんがそっと寄り添ってくれる。
心配そうな顔をしながら、あの日と同じに背中を擦ってくれる。
その手が“大丈夫だよ”って伝えてくれるから。
翔ちゃんのあったかい手のおかげで、俺はまた笑うことが出来ている。
翔ちゃんが居てくれるから、俺はまたなんでもないフリして立っていられるんだ。
翔ちゃんの優しさに甘えてる自覚はある。
俺は翔ちゃんと一緒にいられて嬉しいし、翔ちゃんも嫌な顔しないで側に居てくれてるけど。
申し訳ない気持ちは常に心の片隅にあって。
こんな一方的に頼りきった関係じゃ、きっと翔ちゃんの負担になっちゃうから···せめてこれ以上翔ちゃんに心配かけないようにしたい。
だから、早く忘れなきゃ
もっとしっかりしなきゃって、そう思ってる。
思ってるんだよ?
だけどさ···
「·········」
朝、下駄箱を開けた瞬間、上履きの上に何通か乗っかった手紙が視界に入って。
がくりと落ちた肩を、翔ちゃんの手が励ますようにポンポン叩いてくれる。
「大丈夫?」
心配そうに尋ねる翔ちゃんに、ひきつりそうになるのを堪えて無理やり笑顔を作って頷いた。