第14章 誕生祝い to SATOSHI
せっかく楽しくて幸せな1日だったのに、最後にこんな気持ちになるなんて…
欲をかいた自分が悪いんだけど。
「智!待って!」
トボトボ歩いてたら、後ろからがしっと手を掴まれた。
当然そんなことするのは潤で。
でももう何も聞きたくないし、困った顔も見たくない。言い訳なんかいらないし、無理して付き合ってくれなくていいし。
これ以上悲しい気持ちになりたくないよ。
黙ったままその手を振りほどこうとしたけど、潤は離してくれない。
強引に足を止められたから、仕方なく振り向いたら思った以上に近くに潤の顔があって。
なんだか焦ったような表情をしていて。
目が合ったら逸らせなくなった。
「ごめん…嫌なわけない。智がそんなこと言うなんて思ってなかったから、驚いただけで…」
潤はすごく真剣な顔で、真剣な声で。
必死さが伝わる瞳でじっと見つめられて。
「俺も智と2人で回りたいと思ってたから…智も同じ気持ちで嬉しかったし…」
まっすぐ伝えてくれる言葉には嘘がなくて、俺の心にまっすぐ届く。
「智があんまり可愛かったからさ、照れちゃったんだよ…すぐ返事出来なくてごめんな」
そんなこと見つめたまま言われたら俺の方が恥ずかしい。
だって本当にそう思ってるみたいに聞こえるから。
でも言った潤もなんだか照れたようにはにかんでて、耳が赤くなってて。
「怒ってる?」
俺の機嫌を伺うように聞かれたけど。
俺はもともと怒ってない。
少し悲しかっただけ。
黙って首を振ったら
「良かった」
潤が安心したように笑った。
嬉しそうな笑顔につられるように、少しやさぐれてた俺の心も緩んだ。