第13章 体育祭
人の波に飲み込まれてされるままになっていたが
「カズ…カズっ?!」
翔の焦ったような声が聞こえてハッとした。
近くにいた智たちはどうなった?
まさか同じような状態になってんのか?
身動きが取れない状態で首だけを必死で動かして探すと、少し離れたところに滝沢たちと一緒に避難してるのが見えた。
どうやらうまいこと逃してもらえたらしい。
滝沢は周りをよく見てるもんな。
状況を読むのもうまいし。
目で感謝を伝えると、滝沢がぱちっとウィンクをしてきた。
キザな仕草も男前がやると絵になるな。
隣の斗真まで得意げにドヤ顔をしてるのは微妙に腹立つけど。
翔もホッとした顔をしていた。
それにしても、疲れたな…
こんなに熱くなった体育祭は初めてだった。
優勝がこんなに嬉しいと思うのも。
今までだってそれなりに真面目に参加してたけど、どこか冷めてたのは否めない。
今日は翔の熱に引きずられたのが大きいけど、それだけじゃないのは分かってる。
もう一度人の輪の外に目を向ける。
ニノと楽しそうにこっちを見ながら笑ってる智。
翔じゃないけどさ、今日の俺は智のために戦ってたんだぜ。
そんなタイプじゃなかったはずなんだけど、こんな自分も悪くないなんて思ってる。
何気なく見上げた空は変わらず真っ青で。
清々しい気分の中、体育祭は無事に終了した。