第12章 文化祭
「斗真、本当にありがとう!」
「今日はその笑顔のままでいろよ?」
改めて斗真にお礼を伝えたら、頭をぽんと撫でてくれた。
わざわざ念押しされなくても、顔がにやけるのはとめられないよ。
「うん♡」
「いや、語尾にハートつけんのやめて」
「は?」
ハート?何言ってんだろ?
また斗真は訳わかんないこと言う。
「翔が…いや、なんでもない。俺もう行くわ」
「うん、頑張ってね♡」
よく分かんないけど、表に出て行こうとするから笑顔で見送ったのに
「だから…」
またなんか言おうとして足を止めてしまう。
「いいから、もう行けって」
苦笑いのタッキーが背中を押して、斗真を無理やり表に追いやった。
「ほら!ニノと翔も早く準備して」
くるりと振り向くと、俺たちのことも急かす。
そうだった!
もう交代の時間は過ぎちゃってる。
急いでエプロンと三角巾を身に付けて、翔ちゃんは斗真のを借りて。
2人で手を除菌して。
「遅れてごめんね!」
「大丈夫だよ」
「お疲れー」
慌てて持ち場に行くと、みんなが笑顔で迎えてくれた。
「翔もお疲れ」
「今日も頑張ろうぜ」
翔ちゃんと斗真が交代したことは、もうみんな知ってるみたい。
みんなごく自然に受け入れてくれてる。
「俺は何したらいいの?」
「うーん…とりあえずニノの助手」
「本当?いいの?」
翔ちゃんがタッキーに確認したら、そんな返事で。
「はい、頑張って!キリキリ働けよ!」
「はーい!」
ああ、もう嬉しすぎる。
一緒に裏に入れるだけでも嬉しかったのに、同じ作業が出来るなんて。
ずっと隣にいれるなんて幸せだ。