第2章 友だち
···俺が···ニノを···
「えっっっ·····ふがっ」
思わず叫びそうになった口を、慌てて智が押さえる。
「いきなり叫ばないでよ。ニノにバレちゃうよ?」
口を塞がれたまま、ニノを見る。
全く気付いた様子がなくて安心した。
俺の様子を見て智が手を外す。
「俺が気付いてたことにそんな驚いてんの?」
「いや···俺···ニノのこと好きなの?」
「え?違うの?」
智がものすごく驚いた顔をして、それに俺まで驚いてしまう。
俺、ニノのこと好きなの?
そりゃあ、好きだよ。
だって幼なじみだもん。
親友だもん。
ずっとニノの隣にいた。
ニノはひねくれてて天の邪鬼で可愛くないことばっか言うけど。
でもあからさまに態度に出すのは俺にだけで。
俺には心許してくれてるの、分かってたから嬉しかった。
俺は特別なんだって心のどこかで思ってた。
だからニノが智と仲良くなったとき、本当はちょっとだけヤキモチ妬いた。
俺のニノなのにって。
あの時の気持ちって、もしかしてそういうことだったのかな。
一緒の高校行きたいって思ってあんなに頑張れたのも。
全然気付かなかった
自分の気持ちに。
だって友だちだって思ってたから。
まさか、男の友だちに
それも兄弟みたいなニノに
恋愛感情抱くなんて思わないじゃん!
でも、そっか···
そう思えば、全部納得がいく。
今日受けたショックも、モヤモヤした気持ちも。
全部ニノが好きだったからなんだ。
「俺···ニノのこと···好きだったんだ」
そっか。
そうだったんだ。
「雅紀自覚なかったんだ···なんか、ごめん」
呆然とする俺に、智が申し訳なさそうに謝ってくれた。
「まさか自分で気づいてないなんて思わなくて」
そりゃ、そうだよね。
自分の気持ちなのに、自分で分かってないなんて思わないよね。
「俺、そんなに分かりやすかった?」
「うーん···どうだろう?俺には分かりやすかったけど。ニノは全然気付いてないよ」
「ニノが気付いてないならいいんだけどさ···智ってそういうの気付かないタイプだと思ってた」
智ってそういうの鈍いと思ってた。
俺に言われたくないかもだけど。
「ああ、ね。まぁ鈍い方だと思うよ」
智は自覚があるようで苦笑いしてる。