第12章 文化祭
ーNsideー
2学期が始まった。
日常が戻ってきた感じで、なんかちょっとホッとする。
夏休みもほとんど毎日翔ちゃんと会えてたし、あちこち一緒にお出掛けして思い出もたくさん出来て、夢みたいに幸せだったけど。
あれは限られた時間だから特別だったんだと思う。
それにやっぱり翔ちゃんと過ごす学校生活はとっても楽しい。
2学期に入るとけっこうすぐ文化祭があるんだけど、それも実は密かに楽しみにしてて。
今まではそんなのめんどくさいって思っちゃう方だったけど、翔ちゃんと一緒に参加する初めての行事だと思うと途端に楽しみになっちゃうんだから、我ながら単純だよね。
文化祭は本当にすぐだから、新学期始まってすぐのHRの時間にクラスの出し物を決めることになった。
俺は翔ちゃんと一緒ならなんだっていいやって呑気に構えてたら。
なんとうちのクラスは『メイド喫茶』をやることに決まった。
いやいやいや!!
おかしいでしょ!!
男子校なのになんでだよって思ったけど、すごい大盛り上がりで決まってしまって。
ここ男子校だよ?
男しかいないんだよ?
みんな疑問は感じないの?
俺には疑問しかないんだけど。
謎すぎて隣の席の持ち上がり組のやつにこっそり聞いてみたら、うちの学校の文化祭は毎年必ず何クラスかは女装系の出し物があるんだよって教えてくれた。
伝統なんだって。変なの。
それでも多数決で決まってしまったものは仕方ない。
仕方ないんだけど、問題は誰がメイドをやるかってことで。
こんなノリノリで決まったってことは、女装したいやつが大勢いるのかと思いきや
「ニノと智はメイドな!」
何故か賛成してないはずの俺たちが突然名指しされた。
「なんでだよ!!やだよ!!」
反射的に叫んだけど、俺の声は賛成のコールにかき消されてしまった。